ECDラボ
コロナ禍の新習慣は今後も続く?2021年グローバル消費者トレンド
イギリスの市場調査会社であるユーロモニター・インターナショナル社は、新型コロナウイルスの大流行によって消費者が新たに形成した習慣の多くは、今後も継続するだろうと予測しています。世界各地で行われているロックダウンによって何ヶ月も家に閉じこもった結果、外出しなかったことでお金を貯めている人々の間では「リベンジ消費」と呼ばれる自分自身や住環境のための贅沢品に対する支出が急増したとも言われ、従来とは異なる消費者動向も多く見られています。
これからワクチンの供給が進み各国がリオープンへの動きを整える中、2021年には一体どのようなグローバル消費者トレンドが予測されるのでしょうか?今回はパンデミックによって変化した消費者動向やこれから考えられる新常識などに着目し、2021年消費者トレンドをお伝えします。
開放的な屋外スペースへの需要アップ
新型コロナウイルスの影響で室内の収容率制限を守ったままで、オフィスや施設は営業を余儀なくされています。この先例え通常通りの生活に戻ったとしても、人々は仕事やイベント、そしてレクリエーションのための施設には、屋外スペースを強く好むと答えていることがユーロモニターの調査で分かりました。風通しの良い広々としたバルコニーやテラスといったアウトドアオープンエアスペースが、安全・健康面からも商業・公共施設に常設される日が近いかもしれません。
今後ますます加速する、デジタル化
Zoom会議やFaceTime診療など、パンデミックの間に様々な分野でのデジタル化への急速なシフトが見られました。生活する中で仕事、買い物、遊びといった様々な状況で人とオンラインの両方でシームレスに取引が行われるハイブリッドな世界が新定番となりました。この急速なデジタル化によってもたらされた利便性に即座に順応した我々パンデミック経験者のスタンダードは高まり、企業はますますテクノロジーを駆使したサービスのデジタル化を求められると予想されます。
公私両立のために求められるサービスの柔軟性
自宅での自粛生活が長くなり家で過ごす時間が増えた今、消費者は仕事・家庭・私生活の全てを両立させるために、効率化を図るためにも毎日のスケジュールをより慎重に組むようになったとユーロモニター社の調査結果で分かりました。その結果として、消費者は企業にも柔軟性を求め、24時間体制サービスへの需要が高まるだろうと同社は予測しています。限られた時間の中で出来るだけ多くのことを済ませるために、サービスや製品で時間を取り戻そうとする消費者のニーズを満たすために今後は『営業時間』という概念に囚われずサービスを提供する企業が増えるかもしれません。
不測の事態に備えて貯蓄を増やす、倹約家が増加
贅沢をしたい人たちとは対照的に、マクロ経済の低迷、失業、雇用不安、家計収入の減少によって買い控えを余儀なくされている消費者もいます。そんな状況の中でも、健康やウェルネス、セルフケアに関連した製品やサービスなどにお金を回せるように、嗜好品、普段から利用しているサービス見直し、そしてトレードダウン(より安価なものを買うこと)を検討する人が出てきています。例えば、パンデミック前の平均的なアメリカ人は、12の有料メディアおよびエンタテインメントサービスに加入していたと言われています。中でも25歳〜40歳層では40%がその購読数の多さに圧倒され、今後購読数を減らすつもりであると回答しています。(*1) コロナ禍で自分の価値観や優先順位を見直した消費者たちは、これから品質を犠牲にすることなくより手頃な価格のオプションを探すこととなり、金額に見合った価値の提供を企業はますます求められることになるでしょう。
進化する在宅ワークによる消費活動の変化
パンデミックが終息した後も自宅勤務を完全導入する又は出社数を減少する企業が増えると言われており、自宅オフィスを構えてリモートから仕事を続けることが新定番になりました。通勤時間の短縮やオフィスでの仕事がなくなったことで、毎日飲んでいたコーヒーやランチ代、また同僚との交際費などが大幅に削減されました。その節約分を使って自宅でよりクオリティの高い食生活を求める傾向が強く、食品や飲料の購入は高級志向になる可能性があるとユーロモニターは予測しています。充実したオフィススペースへの投資はもちろん、在宅ワークにまつわる消費財にちょっとした幸せや贅沢を求める消費者が今後増えるかもしれません。
サステナビリティへの回帰
新型コロナの影響によって消費者が衛生面で不安を感じたことで、再利用可能な製品への需要は減少し使い捨ての傾向が強まりました。また、ロックダウンによって経済活動が停止し航空機や車の交通量が減り、都市部を中心に大気汚染が劇的に改善されたことも記憶に新しいでしょう。ユーロモニター社によるとパンデミックの終息後に消費者は企業に対して、従業員の健康と福利を守り、地域社会を支援し、意欲的なサステナビリティの目標を推進するようにこれまで以上に求めるようになると予測しています。
セルフアウェアネスの高まり
コロナ禍で消費者は、健康リスク・経済的困難・孤立といった不安と向き合い、精神力を試されることになりました。自粛期間が始まってから早1年、これを機に自分の優先順位・アイデンティティ・ワークライフバランスなどを見つめ直した消費者が増加したとユーロモニターは述べています。今後、自己啓発や瞑想といったライフスタイルバランスを促進するような商品やサービスの売上は、世界的に増加するかもしれません。
新型コロナウイルスによって生まれた新常識は、これからも定着か
パンデミックは我々の生活に大きな影響を与え、様々な形で人々の価値観を覆すこととなりました。外食産業やアパレルなど、テナントを持っている従来型の業態には大打撃を与えつつも、DoorDashやPostmatesといったフードデリバリーサービスのようにピンチをチャンスに変え、自社サービスを顧客に合わせて変化し、成長し続けている企業もあります。その為には、消費者が感じうる気付きや価値観の変化を見逃さないよう、注意深くモニターし即座に経営に反映する瞬発力が必要になります。
ECDアカデミーでは、トレンド動向調査や日々アメリカの消費者の声を集めているEISメンバーが、消費者の声を効果的にビジネスに活かす「カスタマーディスカバリー」についてレクチャーしています。ご興味のある方は、詳しいカリキュラム内容をご案内しますのでこちらからご連絡ください。
参照